【完全ガイド】Amazon Marketing Cloud(AMC)とは?広告効果を最大化するデータ戦略

Amazon広告を運用している企業の多くが抱える課題のひとつが、「広告投資がどれだけ売上に貢献しているのか見えにくい」という点です。キャンペーンのクリック率や売上は把握できても、複数の広告を経由して購買に至るユーザー行動は、通常の広告レポートでは可視化できません。
実際には、ユーザーが複数の広告やオーガニック経路を経て購入に至るケースが大半です。
しかし、従来の「ラストクリック評価」では、その全体像を正しく把握できず、効果の高い広告に十分な投資ができていないケースが多く見られます。
その課題を根本的に解決するのが、Amazon Marketing Cloud(AMC)です。
AMCを導入することで、広告・オーガニック・DSP・動画・購買行動をすべて一元的に分析し、広告施策を“感覚”から“科学”へ変えることが可能になります。
Amazon Marketing Cloud(AMC)とは?
1-1. Amazonが提供するクリーンルーム型データ分析環境
Amazon Marketing Cloud(AMC)は、Amazonが提供するクリーンルーム型の分析プラットフォームです。
「クリーンルーム」とは、ユーザー個人を特定せずに、複数のデータソースを安全に統合して分析できる仕組みのこと。Amazonの広告データ(インプレッション、クリック、購買履歴)を匿名化した状態で集計・分析するため、プライバシーを守りながら高精度な分析が可能です。
AMCは、Amazon Advertisingの各種広告チャネル(Sponsored Products、Sponsored Brands、DSPなど)のデータを横断的に扱えることで、ユーザーがどの広告を見て、どの経路で購入に至ったのかをユーザー単位で追跡・比較分析できます。
従来の広告レポートでは、各チャネルごとの効果しか見えませんでしたが、AMCを使えば「全チャネルの掛け合わせ」による貢献度まで明らかにできます。これこそが、AMCが“Amazon広告の頭脳”と呼ばれる所以です。
1-2. AMCで扱える主なデータセット
AMCで分析可能な主なデータセットは以下の通りです。
| データタイプ | 内容 |
|---|---|
| 広告データ | 広告の表示回数・クリック・費用・キャンペーン構成 |
| 購買データ | ユーザーが閲覧した商品、カート追加、購入履歴など |
| オーガニックデータ | 広告非接触ユーザーの行動(有料拡張で取得可能) |
| ファーストパーティデータ | 自社CRM・会員データなどを匿名化して連携(ベータ機能) |
これらをSQLクエリで抽出することで、広告とオーガニックの相関関係、購入経路の重複率、リピーター行動などを多角的に分析できます。
Amazon Adsの標準レポートでは得られない「真の広告貢献データ」を引き出せるのがAMCの大きな強みです。
AMC導入のメリットと得られるインサイト
2-1. 広告効果の「真の貢献度」を可視化
AMCの最大のメリットは、広告の真の貢献度(インクリメンタル効果)を定量的に測定できる点です。
たとえば「広告A→広告B→購入」という経路をAMCで再現し、どの広告接触が売上を動かしたかを数値で示せます。
これにより、クリック率が低くても「初期接触としてブランド認知を広げる役割を果たした広告」など、従来見落とされていた重要な広告を正しく評価できるようになります。
また、広告接触群と非接触群を比較することで、広告が「なければ発生しなかった購買」=インクリメンタル効果も明確に算出可能となり、予算配分の最適化とROAS向上を同時に実現できます。
2-2. オーガニック流入との相乗効果を分析
AMCは、有料拡張(Flexible Shopping Insights)を導入することで、広告非接触ユーザー=オーガニック流入の行動も分析可能になります。「広告を見なかったユーザーがどのように購買に至ったか」「広告接触がオーガニック行動に与える影響」を比較できます。
このデータは、SEOやブランド認知戦略の改善にも活用できます。たとえば、広告投資によってブランド検索数が増加しているか、自然流入のCVRが改善しているかを検証し、広告・オーガニック施策を統合的に最適化することが実現可能になります。
2-3. AMC×DSPの連携でターゲティング精度を強化
AMCで分析したデータは、Amazon DSPと連携し、広告配信のセグメントとして再利用できます。
「過去30日以内に商品を閲覧したが未購入のユーザー」や「リピーター候補」を抽出し、再ターゲティング配信を行うことで購買率を高めるような施策も再現可能になります。
この連携により、AMCは分析ツールではなく「実行ツール」へと進化します。
分析→配信→検証のサイクルが一気通貫で回るため、広告運用のスピードと精度が劇的に向上させることができるのです。
(※関連記事:👉 Amazon DSPとは?データ活用で成果を最大化する戦略)
具体的な活用事例と戦略設計
3-1. 経路分析(Path to Purchase)で購買ファネルを可視化
AMCでは、ユーザーが購入に至るまでの経路を「広告接触の順序」として再現できます。
たとえば以下のような分析が可能です。
- 広告A → DSP → 購入(平均接触回数:2,3回)
- 広告B → ブランド広告 → オーガニック閲覧 → 購入
この分析により、最も購買に寄与する接触経路を特定できます。
その結果、「初期接触用の広告」と「購入直前の広告」を役割分担し、ファネル構造に基づいた広告配信設計が可能になります。
また、離脱が多い経路を特定し、ユーザーが途中で興味を失う原因を探ることで、クリエイティブ改善にもつなげられます。
3-2. LTV・リピート分析で顧客価値を最大化
AMCの購買データを活用すれば、顧客のライフタイムバリュー(LTV)分析が可能となり、「新規購入から再購入までの平均日数」「カテゴリ別の継続購買率」「購入単価の推移」などを定量化し、リピーター獲得のボトルネックを可視化できます。
特に、2025年に登場した新データセット「Amazon Retail Purchases」では、過去5年分の購買履歴を分析可能になり、長期的なトレンドや季節変動、定期購入パターンを把握することで、LTVを最大化する広告戦略を設計できます。
AMC導入プロセスと運用ポイント
AMCの導入は、以下のステップにより可能になります。
| ステップ | 内容 |
|---|---|
| ①申請・アクセス権限取得 | Amazon Ads担当を通じて申請し、AMC環境を開設 |
| ②データソース設定 | 広告アカウント(SP/SB/DSP)を紐付け |
| ③クエリ設計 | SQL形式で分析ロジックを構築(テンプレート利用可) |
| ④可視化 | BIツール(Tableau, Looker等)でレポート化 |
| ⑤改善運用 | 分析→施策→検証のサイクルを定期実施 |
導入初期は、Amazonのクエリテンプレートや専門コンサルタントの支援を活用することでスムーズに立ち上げられます。データ更新は通常48時間遅延するため、リアルタイム分析よりも「戦略設計・予算最適化」用途に向いています。
今後の展望:有料機能(Paid Features)の拡張と可能性
AMCは進化を続けており、有料拡張機能「Paid Features」により分析範囲が広がっています。
| データセット | 主な内容 |
|---|---|
| Flexible Shopping Insights | オーガニック・非広告接触ユーザーの行動分析 |
| Audience Segment Insights | Amazon全体ユーザーの興味関心・購買傾向分析 |
| Amazon Retail Purchases | 5年分の購買履歴によるLTV・トレンド分析 |
これらのデータを組み合わせることで、広告・オーガニック・CRM・LTVを横断した「総合的なブランドデータ戦略」が実現します。特にD2Cブランドやリピート商材を扱う企業にとって、AMCは顧客理解の中核ツールとなりつつあります。
AMCは“Amazon広告の頭脳”である
Amazon Marketing Cloudは、広告レポートの枠を超え、データドリブン経営を支えるインフラです。
広告接触・非接触・オーガニック・リピートといったあらゆるデータを統合分析することで、「どの広告がブランド成長に寄与したのか」を明確にできます。
AMCの導入は、単なるツール活用ではなく、企業のデータ戦略を根底から変える第一歩です。
Amazon広告を「運用」から「経営意思決定」へ昇華させるために、AMCの活用は欠かせません。
ぜひご参考いただけますと幸いです。


